第五章 社長&経営幹部のための財務評価

 

 

 Ⅵ.「群分解」で改善の糸口をつかむ

 

    …財務評価は「課題を抽出」すると共に「改善の糸口」を見いだすことにある!

     群分解により、改善ポイントを確認する!

 

 

<借入分解>

 

 借入金・担保状況を「年度別」「銀行別」に分解することにより、「銀行別取引状況の整理」「担保余力の把握」「借入目的に応じた借入種別(長短等)になっているか」「役員借入等その他借入を加えた実質借入総額の把握」の四点を点検します。

 

 具体的には、銀行別の残高推移を確認すると共に担保の設定状況も合わせ、借入単位の「担保余力」も分解整理します。備考には、「月額返済額」「返済期限」「借入目的」等を記入します。

 

 また、「役員借入金」「関係会社借入金」「社債」「割引手形」等の分解整理をし、借入総額を確認します。

 

 尚、不動産の「担保枠評価額」「担保設定額」と各々の「担保枠余力」も分解整理します。

 借入分解した結果を、

   ①「長期資金」を「短期」で借りていないか?

   ②「担保余力」と「担保枠余力」はどの程度残っているか?

      ③「返済額」「利率」の再検討(リスケジュール)はできないか?

の三つの視点で点検します。

 

 

<その他分解>

 

 必要に応じてその他の重要科目(貸借科目・損益科目)の「群分解」を行い、改善ポイントを掘り起こします。

 

     「仮払金」…経費の仮払・役員賞与の仮払などは資産の性格性がうすく、資

           産の仮払と異なるので実質経費として額を確認します。

  

     「貸付金」…「役員」「関係会社」「社員」「取引先」等の分解をします。

 

     「固定資産」…実効資産と遊休資産を整理し、財務体質改善のための意思決定

            に活かします。

 

     「引当金」…主に「退職給与引当金」等の群分解を行います。

 

     「保険積立金」「保険料」「厚生費」

 

          …保険の付与状況を把握するために分解します。

 

     「人件費」…「正社員」「パート」「アルバイト」等の分解、「職種別」の分

           解、「法定福利費」「福利厚生費」「教育研修費」「退職給与

           引当金」等の分解を行います。

 

     「他経費」…その他、「リース内訳」等の主要経費の重点分解をします。

 

     「債務保証」…会社経営に大きな影響を及ぼす可能性のある「債務保証」を分

            解整理し、リスク度を確認します。

            なお、経営者個人の債務保証も必要に応じ添付します。

 

 

 以上、「財務分解評価」により、経営者及び経営幹部が企業評価を大枠で捉える(再分解・粗分解)とともに、問題点の掘り起こし(群分解)を行い、改善行動への具体化へとつなげることが可能になります。

 

 経営計画を立案する時や予実管理を行う時、財務分解評価を意識することにより「あんしん経営」への道が大きく前進していきます。

 


第五章 社長&経営幹部のための財務評価

 

 

 Ⅵ.「群分解」で改善の糸口をつかむ

 

    …財務評価は「課題を抽出」すると共に「改善の糸口」を見いだすことにある!

     群分解により、改善ポイントを確認する!

 

 

<借入分解>

 

 借入金・担保状況を「年度別」「銀行別」に分解することにより、「銀行別取引状況の整理」「担保余力の把握」「借入目的に応じた借入種別(長短等)になっているか」「役員借入等その他借入を加えた実質借入総額の把握」の四点を点検します。

 

 具体的には、銀行別の残高推移を確認すると共に担保の設定状況も合わせ、借入単位の「担保余力」も分解整理します。備考には、「月額返済額」「返済期限」「借入目的」等を記入します。

 

 また、「役員借入金」「関係会社借入金」「社債」「割引手形」等の分解整理をし、借入総額を確認します。

 

 尚、不動産の「担保枠評価額」「担保設定額」と各々の「担保枠余力」も分解整理します。

 借入分解した結果を、

   ①「長期資金」を「短期」で借りていないか?

   ②「担保余力」と「担保枠余力」はどの程度残っているか?

      ③「返済額」「利率」の再検討(リスケジュール)はできないか?

の三つの視点で点検します。

 

 

<その他分解>

 

 必要に応じてその他の重要科目(貸借科目・損益科目)の「群分解」を行い、改善ポイントを掘り起こします。

 

     「仮払金」…経費の仮払・役員賞与の仮払などは資産の性格性がうすく、資

           産の仮払と異なるので実質経費として額を確認します。

  

     「貸付金」…「役員」「関係会社」「社員」「取引先」等の分解をします。

 

     「固定資産」…実効資産と遊休資産を整理し、財務体質改善のための意思決定

            に活かします。

 

     「引当金」…主に「退職給与引当金」等の群分解を行います。

 

     「保険積立金」「保険料」「厚生費」

 

          …保険の付与状況を把握するために分解します。

 

     「人件費」…「正社員」「パート」「アルバイト」等の分解、「職種別」の分

           解、「法定福利費」「福利厚生費」「教育研修費」「退職給与

           引当金」等の分解を行います。

 

     「他経費」…その他、「リース内訳」等の主要経費の重点分解をします。

 

     「債務保証」…会社経営に大きな影響を及ぼす可能性のある「債務保証」を分

            解整理し、リスク度を確認します。

            なお、経営者個人の債務保証も必要に応じ添付します。

 

 

 以上、「財務分解評価」により、経営者及び経営幹部が企業評価を大枠で捉える(再分解・粗分解)とともに、問題点の掘り起こし(群分解)を行い、改善行動への具体化へとつなげることが可能になります。

 

 経営計画を立案する時や予実管理を行う時、財務分解評価を意識することにより「あんしん経営」への道が大きく前進していきます。

 


第五章 社長&経営幹部のための財務評価

 

 

 Ⅵ.「群分解」で改善の糸口をつかむ

 

    …財務評価は「課題を抽出」すると共に「改善の糸口」を見いだすことにある!

     群分解により、改善ポイントを確認する!

 

 

<売上債権分解>

 

 回収を早めることは、「資金繰り改善」「不良債権防止」「財務体質の改善」「事務コストの削減」の観点からも経営の重要事項です。

 

 そのため、売上債権を分解し具体的な改善点を掘り起こす必要があります。

 

 まず得意先別に分解し、過剰残高が「約定」によるものなのか「回収努力不足」によるものなのかも検討事項の一つとなります。また、営業所別や担当者別に分解することにより、売上・原価に加え「回収意識」の向上につなげることも可能になります。

 

 手順は、不良債権を洗い出し、通常債権から切り離します。

 

 続いて、通常債権を「得意先別」「営業所別」「担当者別」などの観点から分解し、改善の目安と可能性を具体的に検討します。

 

 なお、改善可能日数により資金改善額の試算も行います。

 

 

<在庫分解>

 

 売上債権と並んで重要な科目が「在庫」です。

 

 在庫を減らすことは、「資金繰り改善」「不良在庫の防止」「財務体質の強化」「管理コスト&スペースの低減」「事務費の削減」の観点からも重要な経営管理事項となります。売上が下がるなどの機会損失を生じさせることなく在庫を低減するためには、商品・材料毎の適正在庫を設定し、その管理システムを構築することも必要となります。

 

 棚卸資産を、「貯蔵品等」「通常在庫」「処分可能デッドストック(不良在庫)」「処分不能デッドストック」に分解し、さらに在庫金額の多い順に分解することにより、改善ポイントが浮き彫りになります。

 

 通常在庫に関しては、売上高に対する在庫の保有量が適正であるかを検討します。また、「粗利率」と「在庫回転率」を掛け合わせた「交叉比率」は商品の利回りを意味し、高いものが利益貢献度合いの高い商品となります。

 

 


第五章 社長&経営幹部のための財務評価

 

 

 Ⅵ.「群分解」で改善の糸口をつかむ

 

    …財務評価は「課題を抽出」すると共に「改善の糸口」を見いだすことにある!

     群分解により、改善ポイントを確認する!

 

 

 八つの財務評価で会社の業績と大枠での課題が明確化されました。

 

 業績を良くするためには、この課題を具体的に改善するための掘り起こしを行う必要があります。

 

 主要五科目(売上・売上債権・棚卸資産・借入金・その他)の「群分解」により、それを実現します。

 

 

<売上分解>

 利益の源泉である売上分解は経営の最重点事項です。

 

 分解ポイントは、「商品」と「市場」です。

 

 「どの商品をどの市場に売るか」というマーケティングの基本事項を分解することにより、販売戦略につなげることが出来ます。

 

 また、三年程度の「趨勢分析」と「生産性分析」により改善点の掘り起こしと「打つ手」が見えてきます。なお、概算粗利も把握できれば一層効果的です。

 

 分解は、大きく「商品」と「市場」の二つの観点で行います。

 

 まず、商品別の売上を整理します。

 

 商品アイテムが多い場合は「ABC分析」により、主要商品とその他に分類します。スーパー等のように「売場単価」に分類するケースもあります。

 

 次に、市場別売上分解を行います。

 

 市場の広義の定義では、「地域」「得意先(小売店・専門店・量販店など)」「営業所」「担当者」など多くの分類が考えられますが、業種や経営者の考え等により分類します。

 

 分解した上で、さらに生産性分析を行います。

 

 生産性の基準は、以下のようにいろいろ考えられますが経営管理の視点から分析します。

   人(営業担当者・医師・看護婦・運転手など)

   時間(小売店・タクシー・娯楽業など)

   面積(スーパー・小売店・劇場など)

   台数(運送業・病床・娯楽業・理容院など)


第五章 社長&経営幹部のための財務評価

 

 

 Ⅴ.「社長の勲章」は?

 

    …会社の総合評価はなんといっても「総資本経営利益率」!

     これを凌ぐ評価はない!

 

 

 「資金は短距離、利益は長距離」といわれ、まず経営者は、事業資金を確保する必要があります。次に、利益を確保しなければなりません。どんなに資金手当をしようとも利益のない経営はいずれ破綻します。黒字倒産は防ぐことはできますが、赤字倒産は防げないのです。

 

 資金と利益が確保できた上で、効率経営を行うのがすぐれた経営者の条件となります。

 

 そのためには、何といっても「社長の勲章」といわれる総資本利益率(会社の利回り)、すなわち企業全体で投下した総資本(他人資本+自己資本)を元手にどれだけの利益を上げたかを向上させることが必要となります。しかもこの数値は、徹底した経営効率アップを行わなければ数値は良くならず、小手先では改善させることはできません。

 

 だから、「社長の勲章」と呼ばれるのです。

 

 また、総資本利益率は、「回転」と「利幅」に分解されます。

 

 すなわち、

   ①どれだけ「回転(量)」を上げられたか(総資本回転率)

   ②どれだけ「利幅(質)」を確保できたか(売上高利益率)

 の両方が向上しなければ「社長の勲章」は上がっていきません。

 

  評価⑦ 「社長の勲章」を評価する

 

          総資本利益率=差引利益÷総資本×100

 

           …総資本は期首と期末の平均で計算

 


第五章 社長&経営幹部のための財務評価

 

 

 Ⅳ.「お金」は回っているか?

 

    …利益が出ても現預金が残っていない!何故なのか?

     資金表の作成によりお金の流れの問題点を把握できる!

 

 

 資金表は、期間の「現預金増減内訳」を表わします。

 

 すなわち、貸借対照表の「現預金」がどのようにして増減したかがわかる資料です。

 

 資金表が重要視される最大の理由は「資金の破綻は倒産」「資金表の結果は一つ」の二つの事実からです。

 

 まず、損益がマイナスでもすぐには倒産しませんが、資金不足には「まった」が効きません。

 

 よって、倒産しないためにも「資金管理」は重要な経営管理事項となります。

 

 また、資金表は「嘘」をつきません。

 

 損益計算書や貸借対照表は、会計方針すなわち棚卸や有価証券等の評価方法により幾通りもの報告が可能ですが、資金表の結果(現預金残高)は一つしかないのです。

 

 

 資金表には、代表的なものに「資金運用表」「資金繰り表」「キャッシュフロー計算書」などがありますが、過程の表現が違うだけで現預金の最終結果は同じです。

 

   資金運用表…資金の調達と運用に関する資金構造を把握でき、資金繰りの良否の原

         因分析が可能となります。二期間の貸借対照表にて各科目の増減によ

         り、比較的容易に作成できます。

 

   資金繰り表…現預金の流れ(入金・出金)を直接的に捉える表で、経営収支(損益

         に伴う収支)と経営外収支(損益以外の収支)に大きく分けて表現さ

         れます。ただし、取引毎に分類集計が必要なため実務上、作成には労

         力を要します。

   

   キャッシュフロー計算書

        …「営業」「投資」「財務」の三つの活動単位で区分表示されます。営業

         活動部分は現預金の動きから作成する資金繰り表に近い直接法及び利

         益との関連から作成する資金運用表に近い間接法の二通りの作成方法

         があります。

 

 会計規則による提出資料という制約を除けば、経営者が簡単に作成できる「簡易型資金運用表」で十分資金の流れはつかめます。

 


第五章 社長&経営幹部のための財務評価

 

 

 Ⅲ.「体力」が強いか?

 

    …貸借対照表を「粗分解」すると、会社の体力がわかる!

     視点は「腕力」「足腰」「回収支払バランス」「借入返済年数」の四つ!

 

 

    評価⑤ 回収支払のバランスは?  

 

       回収支払バランス=(売上債権÷売上高×365日)

                  -(仕入債務÷仕入高×365日)

 

       資金改善額

        

         資金改善額=月平均売上高×回収支払バランス÷30日

 

 体力の四つ目の点検事項は、何年で借入金が返済できるかです。

 

 稼いだ利益により何年で借入金等が返済できるか計算したもので、実質借入年数以内であるかを確認します。

 

 借入金等を「税引後差引利益」で割って求めます。

 

 税金がかからない場合、分母を「差引利益」で計算します。

 

 

  評価⑥ 借金は何年でなくなる(借入返済年数)?

 

       借入返済年数=借入金等÷(差引利益÷2)

        …借入金等=借入金+設備手形+社債

        …減価償却費は設備維持費用・再投資費用として計算せず

        …税金が掛からない場合の分母は「差引利益」


第五章 社長&経営幹部のための財務評価

 

 

 Ⅲ.「体力」が強いか?

 

    …貸借対照表を「粗分解」すると、会社の体力がわかる!

     視点は「腕力」「足腰」「回収支払バランス」「借入返済年数」の四つ!

 

 

    評価③ 根本的な安全性(自己資金比率)は?  

 

       自己資本比率=自己資本÷総資本×100

 

 企業の「腕力」に相当するものが「当座比率(または流動比率)」です。

 

 流動負債に対する当座資産の割合で計算し、「当面の安全性」を評価することが出来ます。

 

 すなわち、1年以内に支払いまたは返済しなければならない負債(流動負債)をすぐに現金化できる資産(当座資産)でどの程度カバーできるかを表わしたものです。これも大きければ大きいほど安全ですが、100以上であれば優良です。

 

 長期借入金により運転資金を調達した場合は、当座比率(当面の安全性=腕力)は改善されますが、自己資本比率(根本的な安全性=足腰)は悪化します。

 

  評価④ 当面の安全性(当座比率)は?

 

       当座比率=当座資産÷流動負債×100

 

 三つ目の体力評価は、当座比率の計算要素の中でも特に重要な「売上債権」と「仕入債務」に注目し、回収と支払条件のアンバランスがないかを点検します。特に、信用取引を行っている企業において点検すべき項目です。

 

 「売上債権残日数-仕入債務残日数」を計算し、「+」が大きい場合は支払条件よりも回収条件が悪いことを示し、運転資金にマイナス影響する点に注意します。「ゼロ以下」になるように心がける必要があります。

 

 また、「+」の時、「資金改善額」を計算し回収の遅れにより資金繰りに影響している金額を確認してみましょう。

 


 

第五章 社長&経営幹部のための財務評価

 

 

 Ⅲ.「体力」が強いか?

 

    …貸借対照表を「粗分解」すると、会社の体力がわかる!

     視点は「腕力」「足腰」「回収支払バランス」「借入返済年数」の四つ!

 

 

 貸借対照表は、期末時点の会社の「財産」を表わします。

 

 表の右欄が資本の調達元(負債+資本)、左欄が運用元(資産)を表わします。

 

 資本には、「資本金」や「剰余金(稼いだ利益の累積等)」等が含まれます。また返済する必要のない「正味財産」なので、自己資本ともいいます。

 

 負債には、「仕入債務」や「借入金」などが含まれ、他人から調達したものなので、いずれ支払いまたは返済しなければならないもので、他人資本とも呼びます。

 

 一年以内の返済しなければならない短期の負債を「流動負債」、それ以外を「固定負債」と呼びます。

 

 資産は、調達した資本をどのように営業に活用しているかを表わしたもので、「売上債権」「棚卸資産」「土地・建物等」などに分類表示されます。

 

 負債と同時に一年以内に現金化出来る資産を「流動資産」、それ以外を「固定資産」「繰延資産」と呼びます。

 

 また、流動資産の中から棚卸資産及び特に現金化しにくいものを除くと、現金に限りなく近い意味の「当座資産」と呼ばれます。

       *売上債権=受取手形+売掛金

        仕入債務=支払手形+買掛金(+外注未払金)

        棚卸資産=商品+製品+仕掛品+半製品+材料+貯蔵品等

 

 企業の「根本的な安全性」は、資本調達の何%が自己資本(返済の必要がない)により賄われているかによって評価されます。

 

 人間にたとえれば「足腰」のようなもので、自己資本を総資本で割って計算します。大きければ大きいほど倒産リスクは低くなりますが、せめて30%以上ほしいものです。

 


 

第五章 社長&経営幹部のための財務評価

 

 

 Ⅱ.「採算」がとれているのか?

 

    …損益計算書を「再分解」し、変動損益計算書を作成すると真の採算が見える!

     そして、「生き残るための売上高」と「労働生産性」を確認する!

 

 

 変動損益計算書が完成したら、前項のような「目標利益分岐点売上高の式」を作成します。

 

 この式の目標利益がゼロの時、すなわち固定費を限界利益率で割った値が「損益分岐点売上高」と呼ばれますが、経営的に見た場合は目標利益を借入金等返済額(税金支払分も加味し二倍する)に見立てて計算した「借入返済可能売上高」が最も重要となります。

 

  評価① 借入返済可能売上高はいくらか?

 

        目標利益分岐点売上高=(固定費+目標利益)÷(限界利益率÷100)

        目標利益=借入等返済額(設備手形決済等を含む)×2

         …税金分を50%として計算

         …減価償却費分を控除する考えもあるが設備維持費用・再投資費用と

          して計算せず

         …繰越欠損等により法人税等がかからない場合は「×2」は不要

 

 

 借入返済可能売上高の次は採算を見る視点が「労働分配率」です。

 

 労働生産性をみる重要な指標で、従業員の働きにより生み出された限界利益と人件費のバランスを表わしたものです。

 

 すなわち、稼いだ粗利(限界利益)のうち何%を人件費として払っているかを確認します。労働分配率は低い方がよいのですが50%以下を優良企業の一つの目安にしてください。

 

 上場企業の89年労働分配率は約48%、98年は約53%となっています。労働分配率が低くかつ一人あたりの人件費が他社よりも高ければ、生産性が高く待遇も良い企業になるわけです。

 

  評価② 労働生産性(労働分配率)は?

 

       労働分配率=人件費÷限界利益×100

       人件費=役員報酬・給与・賞与・法定福利費・福利厚生費・退職金

                 +(教育研修費・保険料) 

      


第五章 社長&経営幹部のための財務評価

 

 

 Ⅱ.「採算」がとれているのか?

 

    …損益計算書を「再分解」し、変動損益計算書を作成すると真の採算が見える!

     そして、「生き残るための売上高」と「労働生産性」を確認する!

 

 損益計算書は、「経営成績(儲けとその過程)」を表したものです。

 

 経営者には一番馴染みやすい財務諸表です。

 

 しかし、制度会計の損益計算書では、図にありますように売上原価及び販管費の各々の中に「変動費」と「固定費」とが混在しています。

 

 変動費とは売り上げに伴ってかかる費用であり、商品原価・材料費・外注費・製造変動費・販売変動費等です。固定費とは売り上げに係わらず費用として固定的に出ていく人件費・家賃等を示します。

 

 原価に固定費が含まれていると売上がゼロの時売上原価もゼロとなり、費用としてかかった固定費が見えなくなり、特に製造業の場合は「採算」を正しく捉えにくくなります。固定費は売上にかかわらず費用として出ていきますので、最低でも固定費をカバーできる売上がいくらであるかを知る必要があります。

 

 そのため、損益計算書を「再分解」して変動費と固定費を区分した「変動損益計算書」を作成し、採算を正しく捉える目が必要となります。

 

 変動損益計算書は、「売上高」「変動費」「限界利益」「固定費」「差引利益」に分解され、さらに固定費を「人件費」「減価償却費」「他固定費等」「支払利息」に分解されます。(ここでは、在庫増減に伴う変動損益計算書は省略しています)。

 

 これにより、採算構造がよくわかるようになります。


第五章 社長&経営幹部のための財務評価

 

 

 Ⅰ.「財務3表」の関連を知る

 

    …財務3表の各帳表(損益計算書・貸借対照表・資金表)の役割と関連を知る!経営状況を大きく捉える!

 

 最初の分解評価は、財務の三分解から始めます。

 

 財務を三つに分解し、「財務3表」を読むことから始めます。

 

 財務3表とは「損益計算書」「貸借対照表」「資金表」を示し、会社の業績結果が全て凝縮されています。

 

    ①「損益計算書」…「儲け=成績(利益の発生過程)」がわかる

    ②「貸借対照表」…「体力=財産(資産や負債等)」がわかる

    ③「資金表」  …「お金の流れ(現預金の増減原因)」がわかる

 

 業績が良いということは、「利益が出て」「財務体質が強く」「資金が回る」ということです。

 

 経営者が財務3表のこの三項目を読むことにより会社の業績を大きく把握するとともに、課題をも明確化でき、改善点掘り下げのスタートラインにつくことが出来ます。

 

 続いて「財務3表の関連」をしっかりと確認します。

 

 この仕組みが分かると「財務」に関する理解も一層深まります。

 

     ①損益計算書では、「売上」から「原価」「経費等」を引いて「利益」が計算されます。その「利益」は貸借対照表に流れます。

     ②貸借対照表に流れた利益は、「資本」の部の「当期利益」に入り、「資産」と「負債」との増減関係の中でプラス・マイナスされ、最後に残ったものが「現預金」として表示されます。 

     ③「期首現預金」がどのようにして「期末現預金」に至ったかの内容を表わしたものが「資金表」です。

 

 以上、財務3表で確認できるものは、「儲け」と「体力(財産)」と「お金の流れ」の三つで、経営者の重要かつ最低確認事項です。

 


第五章 社長&経営幹部のための財務評価

 

 

 経営計画を立案し達成管理を実践していくのに欠かすことのできないのが「財務評価」です。すなわち、経営計画数値や達成数値が「経営的に見て、よい状況なのか?」「どこに課題があるのか?」等を判断する知識を経営者や経営幹部は身に付ける必要があるのです。ところが、一般的な財務評価のイメージは分析項目が多く難しくて馴染みにくいとよくいわれます。

 

 この章では、とかく難しいといわれる財務評価を経営者及び経営幹部が日常の経営活動の中で活かせるようわかりやすく解説します。

 

 まず、経営計画や実績の「貸借対照表や損益計算書」を「再分解」「粗分解」「詳分解」という三つの分解手法により評価してみましょう。

       

      「再分解」…視点を変えて別の分解します。

      「粗分解」…必要項目を一括で大きく分解します。

      「詳分解」…重点項目を特に細かく分解します。

 

 そして、経営者向けの「八つの評価」をマスターしてください。

 

 これで80%程度の業績評価が可能になり、よい会社になるための「何か?」が見えてくるはずです。

 

 なお、当章は「経営分析」の専門的な解説を主眼としてはいません。

 

 「経営に活かす」視点を目的としているため、経営判断に影響がない限り厳密さよりも「簡潔さ・わかりやすさ」を優先させて解説しています。

 

 「財務評価は難しい?」「財務評価は役立たない?」などの誤解をクリアし、明日からの経営に活かしていただきたいと思います。

 


第四章 経営計画の効果

 

 

Ⅲ.交渉・申請等に活かす経営シミュレーション

 

<実践事例J/銀行交渉に活かす(その2)>

 

 犬猫病院J社は開業10年経過し、売上も順調に推移し、地元の認知度も十分な病院です。

 

 現在の獣医数からみた社屋の広さに限界を感じ新社屋建設が検討されましたが、時にバブル崩壊の直後でもあり、銀行の融資はスムーズではない事が予想されました。そこで、第一回目の銀行交渉時より中期5カ年経営計画書を作成し、会計事務所の同行を伴い支店長及び融資担当に積極的に説明したところ、経営者としての考え方、売上確保の現実性が浮き彫りとなり、その1ヶ月後には所要の融資金額が実行されました。

 

 

<実践事例K/新規事業法の申請に活かす>

 

 廃棄物処理システムの開発業者であるK社は、特定新規事業認定申請書類の数値計画部分の作成のため、会計事務所のサポートを受け中期5カ年数値計画書の作成を行いました。 結果的に、K社は通産大臣より新規事業法の認定を受けることが出来ましたが、産業基盤整備基金への新規事業法申請書類提出前の打ち合わせに際し、数値計画の変更を指示された際、パソコンを持ち込みその場で経営シュミレーションを素早く正確に行ったところ、その数値計画の迅速性・正確性と損益・貸借・資金の各数値との連動性が高く評価されました。 

 

 K社長は、経営計画を通して信頼性を公的機関から得られたことに満足しました。

 

第四章 経営計画の効果

 

 

Ⅲ.交渉・申請等に活かす経営シミュレーション

 

<実践事例H/親会社の説得に活かす>

 

 H社は海外のパソコンソフトハウスの子会社です。銀行借入の代わりに、親会社への権利料の支払を遅延させてもらうことで資金繰りを支えていました。しかし、親会社より支払の正常化を求められるようになり、資金繰り計画を立てる必要性が出てきました。不良在庫が発生しやすいソフトの適正仕入数を求め、売上計画等を基にシミュレーションを行いました。その結果、止めていた本社への支払を90日のサイトであれば可能であることがわかり、計画書をもとに本社へ現状の説明を行った結果、計画の承認を得ることができました。

 

 支払条件だけではなく、受注量交渉や受注単価交渉などの親会社との交渉にも経営計画は効果を発揮する事ができます。

 

<実践事例I/銀行交渉に活かす(その1)>

 

 I店は、年商3800万円の宝石無店舗販売業(個人事業)で奥さんと二人で商売をしています。専従者給与控除前利益は約300万円です。

 

 在庫運転資金500万円の公庫借入の申し込みをしたところ、結果は融資先送りとの回答でした。融資担当者によると決算書等の書類のみの審査であり、「黒字決算、利益潤沢の会社には融資ができるのだが、…」との事でした。事業の将来性に関しては質問すらありませんでした。

 

 「だめでもともと」の気持ちもありましたが、会計事務所の勧めで金融機関に対する借り入れを目的とした経営計画書の作成を行いました。当初は、自営業者でもあり、あまり複雑ではない宝石無店舗販売といった業種に、特に経営計画が必要とは思えなかったのですが、経営シミュレーションが進むにつれ、現在の課題や方向性が数字等を通して明確になり、完成した経営計画書を手にした時に自分自身のものとして率直に受け入れることができました。

 

 完成後、その経営計画書を添付し銀行に初めて融資の申し込みをしました。融資担当者の「可能ではないか」との言葉を受けて正式に申し込みました。その後、銀行の融資担当者が来訪、提出した経営計画書に基づく簡単な接見による審査が終了しました。後日融資決定の連絡があり、希望がかないました。

 

 金融機関に対する経営計画書が円滑な融資につながった一例です。また、現実的な今後の経営見通しも明確になったことも大きな収穫となったのです。

 


第四章 経営計画の効果

 

 

Ⅱ.後継者育成・経営会議・資金繰りの健全化に活かす経営シミュレーション

 

<実践事例F/経営会議での活用>

 

 F社は年商9億、従業員50名の葬祭イベント会社です。

 

 経営計画は四期前より作成し、同時に毎月10日に課長以上の幹部も参加して経営会議を実施しています。三期目までは、「業績は行動した結果に伴ってくるものだ」との考えで主に行動計画の進捗管理を中心に行い、数値計画は売上高の予実対比だけでした。しかし、四期目より利益管理の徹底をテーマに、経営会議を実行し売上原価の低減化が図られ、粗利益率も約3%向上し業績が大幅に向上しました。

 

 さらに来期からの部門別損益管理に向けて経理の自社処理(自計化)の導入も行い、経理業務の大幅なスピードアップと経営管理のレベルアップを計画中です。

 

<実践事例G/混同していた個人と事業の明確化に活かす>

 

 よくあるケースですが、個人事業の場合で家計と経営の混同による資金不足で困っている個人病院のG院長の例です。

 

 いつも病院の窓口から保険診療の窓口負担金を不定期に持ち出し、月末になると支払いのための資金が不足がちになります。会計事務所から何度も「家計と経営の分離」の指導を受けたのですが、喉もと過ぎれば何とやらで、しばらくするとまた同じことの繰り返しといった状況でした。

 

 そこで経営計画時において、「生活費」「遊興費」「その他」というように「事業主貸勘定」に該当する出金をすべて細かく設定し、実際に通帳より出金する日まで毎月何日と指定したうえで「資金繰り表」を作成し、院長室の壁に貼って実践しました。

 

 その結果、いままでのアバウトな状況が一変して「資金繰り表」通りの経営が可能になったのです。当たり前のことではあっても、それが出来ないという人もいるわけで、経営計画が実践経営で役立っている一つの事例と考えられます。

 


第四章 経営計画の効果

 

 

Ⅱ.後継者育成・経営会議・資金繰りの健全化に活かす経営シミュレーション

 

<実践事例E/後継者とのギャップ修正に活用>

 

 「自社の詳細な財務状況を後継者である息子に開示していない」とか、「自社の将来の方向性を親子間で語り合っていない」という会社が多い中、E社の社長は「厳しい時代を乗り切るためには、早く後継者に経営参画意識をもってもらいたい」というスタンスで経営シミュレーションを行いました。

 

 その結果、どちらかというと親から与えられた仕事のみをこなし、自ら積極的に行動をおこす意識があまりなかった後継者が、経営計画立案を通して「経営参画意識の欠如」「スピード営業の重要さ」「売上件数目標に対する意識の明確化」「利益に対するこだわり」等に気付き、日常の行動がガラリと変わりました。

 

 

 また、E社の社長は、製造現場では頑張っているが資金繰りは親と経理部長任せという後継者と一緒に経営シミュレーションを行い、設備投資に伴う借入金返済の経営に対する重さ・危機感を後継者に認識させました。

 

 E社長のこの行動は、ある日突然やってくるであろう事業承継時のことを考えてのことでした。

 

 

 E後継者は父親の社長と経営に対する方向性のズレを日頃から感じていました。社長のやり方が新しい時代にマッチしなくなってきているのです。E後継者はそのギャップを早期に埋めないと会社が持たないとの危機感から、社長の同席を求め経営シミュレーションを行いました。

 

 その結果、社長自身がこのままでは立ち行かないとの認識を新たにし、親子間のベクトル合わせを会計事務所という第三者を絡ませる事で感情的にならずに行うことができました。

 

 

 以上、経営サイクルの確立していない企業にとって、経営計画サポートのアウトソーシングは、大きな価値があります。

第四章 経営計画の効果

 

 

Ⅱ.後継者育成・経営会議・資金繰りの健全化に活かす経営シミュレーション

 

<実践事例E/後継者とのギャップ修正に活用>

 

 「自社の詳細な財務状況を後継者である息子に開示していない」とか、「自社の将来の方向性を親子間で語り合っていない」という会社が多い中、E社の社長は「厳しい時代を乗り切るためには、早く後継者に経営参画意識をもってもらいたい」というスタンスで経営シミュレーションを行いました。

 

 その結果、どちらかというと親から与えられた仕事のみをこなし、自ら積極的に行動をおこす意識があまりなかった後継者が、経営計画立案を通して「経営参画意識の欠如」「スピード営業の重要さ」「売上件数目標に対する意識の明確化」「利益に対するこだわり」等に気付き、日常の行動がガラリと変わりました。

 

 

 また、E社の社長は、製造現場では頑張っているが資金繰りは親と経理部長任せという後継者と一緒に経営シミュレーションを行い、設備投資に伴う借入金返済の経営に対する重さ・危機感を後継者に認識させました。

 

 E社長のこの行動は、ある日突然やってくるであろう事業承継時のことを考えてのことでした。

 

 

 E後継者は父親の社長と経営に対する方向性のズレを日頃から感じていました。社長のやり方が新しい時代にマッチしなくなってきているのです。E後継者はそのギャップを早期に埋めないと会社が持たないとの危機感から、社長の同席を求め経営シミュレーションを行いました。

 

 その結果、社長自身がこのままでは立ち行かないとの認識を新たにし、親子間のベクトル合わせを会計事務所という第三者を絡ませる事で感情的にならずに行うことができました。

 

 

 以上、経営サイクルの確立していない企業にとって、経営計画サポートのアウトソーシングは、大きな価値があります。

 


 

第四章 経営計画の効果

 

 

Ⅰ.再建計画・開業計画に活かす経営シミュレーション

 

<実践事例C/再建計画(その3)>

 

 C社では真夜中の二時まで役員会議を行い、業務内容と人をボードに書いて辞める人の仕事を誰が補うのか等、リストラシミュレーションを行い、当期利益1700万と償却3400万の合計5100万を長期借入金の返済財源に当てる計画を確定し、翌朝七時半より役員一同頭を下げ、計画発表を行い、経営危機を乗り切りました。

 

 半年後、部門別損益を把握し予実対比を行い、変動費率に注目しました。デフレ傾向の社会では、値引が横行しており、営業マンが安易に値を下げて販売しているかどうかを確認したのです。対比で変動費率が上がっていたので、実績に合わせ7月から12月の変動費を上げてシミュレーションすると年間の利益がどれだけ下がるのかが見えました。売上の一部を無料にしていた事もわかりました。安易な値下げも阻止する意思決定と社内合意も確認することができました。

 

 経営シミュレーションは先見経営に不可欠な経営手法です。

 

 

<実践事例D/開業計画>

 

 医師が勤務医から経営者に変わる人生の一代決心をする時、すなわち今までの安定した生活から経営者として荒波の中に漕ぎ出して行く大きな意思決定をする際に経営計画は無くてはならない必需品です。

 

 開業医Dさんは、まず「どの程度の投資(土地建物・医療器械等)をするのか?」「そのためにいくら借入をするのか?」「それを何年で返済するのか?」「一日何人の患者来院数が見込めるのか?」「そのためにスタッフは何人採用し、人件費はいくらまで支払えるのか?」「その他諸々の経費はどうなのか?」等、異なった諸条件による幾通りかの予算(ABC予算)によるシミュレーションを行い、より可能性のある、より確実な経営計画書を作成し開業しました。

 

 金融機関に対しては経営計画書を持参し説明することで借入実行をよりスムーズにできました。

 

 医院であるか否かを問わず、このような新規開業の見通しを立てたり、第三者の協力を要請するための説得資料として経営計画書を作成することは効果があります。

 

 開業のための必需品、それは経営計画です。


第四章 経営計画の効果

 

 

Ⅰ.再建計画・開業計画に活かす経営シミュレーション

 

<実践事例A/再建計画(その1)>

 

 年商以上の借入を抱えた上で取締役の背任に合い営業ルートを奪われ、にっちもさっも行かなくなったベンチャー企業A社のケースです。

 

 再建のための経営シミュレーションを行い、「可能な売上はいくらか…」「借入返済を利払いのみにした場合…」「ビルを移転した場合…」「報酬・給与を未払いにした場合…」など、実現可能な幾通りもの道を夜中まで模索しました。 

 

 具体的には、各々の道を選択した場合の「損益計算書」「貸借対照表」「資金繰り表」を作成し、どうすれば会社が成り立ち、生き残りの道が開けるのかを試行錯誤しました。

 

 その結果、社員を約半数リストラし、かつ2000万円の新規借入を行うことができれば、ギリギリの再建の可能性があることがわかりました。

 

 いろいろな「おもい」もあったでしょうが、社長は意思決定し、最後の借入を学生時代の友人に依頼しました。そして現在も会社は存続できています。

 

 経営計画シミュレーションにより、「社長が先の見通しを立てることができ、意思決定が行われ、計画に沿って努力し、達成し、経営の維持ができたこと」に大きな価値を感じています。コンサルタントに頼ることなく、社長自身が意思決定し、自分で道を開いたのです。

 

 真の経営とはこのようなものではないでしょうか。

 

 

<実践事例B/再建計画(その2)>

 

 タクシー業のB社では、人件費の高騰と車両のメンテナンス費用の増加により3期連続の経営損失となっていました。過去の蓄積と社長本人の資産の処分などで何かと切り抜けてきましたが、それも底を突き、景気の低迷により利用客の増加が見込めず、このままでは借入金の返済もおぼつかないということで経営シミュレーションを行いました。

 

 第一段階は借入返済計画書の作成をメインとし、金融機関に対するリスケジュールに成功しました。これを契機に第二段階に入り、利益計画を中心とした大胆なリストラシミュレーションを実施し、新たな個人成果配分を基本とした賃金規定の作成と役員報酬の改定を軸とし、利益を計上できる体質改善を行いました。

 


第四章 経営計画の効果

 

 

 経営計画の効果は、西郷隆盛のようです。

 

 「大きく打てば大きく、小さく打てば小さく…」、実践する経営者の取り組み姿勢により効果は大きく変わります。

 

 効果のまず第一は、経営にゆとりが生まれます。選択し得る経営意思をもとに、将来の見通しを予め把握できるため、経営に余裕が生じるとともに課題に対して早め早めの手を打つことができます。文字通り「先見経営」を実現できるようになります。

 

 第二に、意思決定がしやすくなります。「目標達成の可能性は?」「新商品や新市場への進出の妥当性は?」「設備投資や人員強化は得策か?」「事業所の統廃合をすべきか?」

 

「出店計画をどうするのか?」など、社長の迷いは様々です。損益・貸借・キャッシュフロー等が一体となった経営の模擬実験(シミュレーション)が可能なため最適な意思決定が可能になります。

 

 第三は、金融機関や親会社からの信用が高まります。銀行融資を受ける際に重要視される項目の一つは、過去の実績及び今後の見通しです。

 

 きちんとした経営計画書は、計画性のある企業姿勢と合わせて外部に対して好印象をもたらします。

 

 第四は、幹部の活性化・後継者の育成につながります。

 

 経営計画を媒体にして、幹部や後継者と共に経営を考える事により、経営者の意思を徹底させるだけではなく、経営参画意識の向上や後継者教育も期待できます。

 


第三章 経営体質強化に活きる経営計画

 

Ⅲ、経営の等式と不等式

 

   …戦略経営とは簡単にいうと知恵を絞ることである!  

    知恵を絞る場面は二つある。それは「いくさ前」と「いくさ中」であり、「いくさ後」では手遅れである!

    特に重要なのは「いくさ前」であり、具体的には「選択と意思決定」をすることである!

     

 ここに一つの等式があります。

 

    結果=選択×実行

 

 

 「何を選んで(意思決定)」「どう動いたか」によって結果が決まるという因果律を表します。何度も復唱しますが、経営者は「結果に対して責任をとる」べき人です。経営者の正しい意思決定と計画に基づく軌道修正が会社の命運を決定し、社員とその家族の人生に大きな影響を及ぼすのです。

 

 後者の「実行」に関しては、厳しい経営環境下で、現在どの経営者も一生懸命やっています。

 

 今重要なことは、「選択(意思決定)」にどの程度のエネルギーをかけているかということです。

 

 また、次のような不等式もあります。

     

     365日<1日+364日

 

 厳しい環境下で、どの経営者も365日体制・24時間体制で一生懸命頑張っています。しかし、もっと良い方法があるのです。

 

 1日だけ頑張らない日をつくるのです。

 

 電話も来客もないところで、自社を見つめ、ビジョンをつくり、戦略戦術を考え、明日からの行動を考えるのです。すなわち経営計画を立案するのです。その上で、残りの364日を全力投球するのです。経営者自身も会社も大きく変わるはずです。

 

 この等式と不等式を実行するか否か、全ては「社長の意思決定」から始まります。

 


第三章 経営体質強化に活きる経営計画

 

Ⅱ、社長の「四つの闘い」

 

   …事業経営はよく「戦(いくさ)」と比喩される!   

    しかし、本来の戦は会社の中にあり、社内の戦に勝てずして外部の戦には勝てな

    い!

 

 

 <つづける>

 

 四つ目は「つづける闘い」です。

 

 ボトムアップ方式の経営計画や経営サイクルの確立は、最初からスムーズには行かないケースもあります。経営者と幹部の連係プレイだからです。

 

 「熱意を喪失した段階を敗北という」言葉もあります。とにかく、幹部の反応に左右されることなく、確信を持ってコツコツと継続することです。人がみな向上心を持っている限り、最初はぎこちなくても数ヶ月繰り返すうちに必ず参加メンバーは要領を得てくるはずです。

 

 「型と魂」という言葉があります。

 

 「魂」、すなわち武道でいえば剣の道や柔の道を究めてから竹刀を持ったり柔道着をつけるのも方法とは思いますが、「型」から入るのも一つの上達方法です。

 

 とにかく、素振りや受け身から始めるのです。つらい思い、痛い思いをしているうちに剣道とは柔道とはの「道」が見えてくるのです。

 

 経営計画や経営サイクルの確立も同様で、最初から理論的な完璧性を求めるのではなく、まず実現することをお勧めします。せめて三年続けてみて下さい。

 

 「経営計画発表会がないと新年度がスタートできない」「よい経営会議ができ、先手が打てる、先が見える」という風土ができた時、経営体質は相当強化されたといっても過言ではありません。

 


第三章 経営体質強化に活きる経営計画

 

Ⅱ、社長の「四つの闘い」

 

   …事業経営はよく「戦(いくさ)」と比喩される!   

    しかし、本来の戦は会社の中にあり、社内の戦に勝てずして外部の戦には勝てな

    い!

 

 

 <しゃべらない>

 

 三つめは、「しゃべらない闘い」、つまり会議での闘いです。

 

 前述の三悪会議(不準備・演説・言い訳)ではない「よい会議」とはどのような会議なのでしょうか。

 

 会議とは、「決定の場」「訓練の場」「状況認識の場」といわれます。

 

 簡単にいうと、まず「結論を出す」会議にすることです。結論の出ない会議は単なる情報交換会であり共通認識や行動につながりにくくなります。

 

 次に、社長はできるだけ「しゃべらない」努力をすることです。そのためには、司会をきちんと立て、事前レポートを用意させ、全ての参加幹部が意見を述べ、書記係に議事録をつくらせ配布する、などの工夫をするのも有効な方法です。社長の「しゃべらない」闘いは、幹部の発言を促し、幹部の能力を引き出すことや訓練につながります。

 

 社長が口を開くべき局面は、「最終の意思決定」と「正しい状況認識のための説明時」です。特に後者は、日常での業務要請がスムーズに現場に受け入れられるために重要です。

 


第三章 経営体質強化に活きる経営計画

 

Ⅱ、社長の「四つの闘い」

 

   …事業経営はよく「戦(いくさ)」と比喩される!   

    しかし、本来の戦は会社の中にあり、社内の戦に勝てずして外部の戦には勝てな

    い!

 

 

 <任せる>

 

 二つ目の戦いは、「任せる闘い」です。

 

 「おまえに仕事を任す」といった社長の舌が乾かないうちに、いつの間にか口を出し全てをぶちこわす話は良く聞く話です。どの経営者も仕事を任せたほうが経営的には良いことは分かっています。なぜ、それができないのでしょうか?

 

 それは、最終的な責任は自分がとらなければならないため、任せようとする人の具体的な戦術や行動計画がはっきりしない限り不安で任すことができないのです。

 

 ボトムアップ方式の経営計画立案では、その幹部の考え方や戦術が事前にわかるので、予めアドバイスや指導をした上で任せることができます。

 

 あとは、「予定通り進行できているかどうか」「予定通り実行しても実績が上がらなかった理由はなぜか」等を定期的に確認し、必要に応じてサポートすることにより、権限委譲がスムーズにかつ効果的に行われます。

 

 絶対的に信頼できる幹部は別として、発展途上の幹部や社員に対し上手に権限委譲をするには、「人を信用して任す以上に、その人が何をするかを信用して任す」ことが重要なポイントとなります。

 

 「任せて取る=仕事を任せて成果を横取りする」という笑えない話もありますが、真の「任せて取る=仕事を任せて責任をとる」を実現するためにもボトムアップ方式の経営計画は有効となります。

 


第三章 経営体質強化に活きる経営計画

 

Ⅱ、社長の「四つの闘い」

 

   …事業経営はよく「戦(いくさ)」と比喩される!   

    しかし、本来の戦は会社の中にあり、社内の戦に勝てずして外部の戦には勝てな

    い!

 

 

 <引き上げる>

 

 一つめは、「引き上げる闘い」、すなわち幹部や社員の「能力を引き上げるための闘い」をしなければなりません。

 

 幹部が参画して経営計画を立案するボトムアップ方式の場合、幹部が提出する計画は一般的に「売上は低め、経費は多め」といったような堅めの傾向になりがちです。責任が生じるのでやむを得ない面もあります。

 

 ここで経営者の闘いが始まります。妥協せずに「努力しなければ達成できない目標を与えること」が重要となります。

 

 具体的には、能力が100の幹部や社員に110とか120の目標を与えることです。

 

 その理由は、「会社全体の目標を達成」するためと「人の育成」のためです。中期目標や全社目標を達成するために不足する数値は、各現場の努力と協力によらなければならないからです。

 

 また、人は現在の能力以上の目標を与えられたときに、脳や苦しみ、その過程の中で潜在能力を発揮することができるといわれています。

 

 人の成長に能力以上の目標設定は欠かせない要素であり、努力しなくても達成できる目標が「予定」と呼ばれ、「計画」とは呼ばれない所以です。

 

 さらに、自分の能力以上の目標を達成したときの達成感は、能力以下のそれとは比べものにならないほど充実したものになります。

 

 このように、潜在能力の発揮と達成の喜びを与えることは経営者の大きな役割でもあるのです。


第三章 経営体質強化に活きる経営計画

 

Ⅱ、社長の「四つの闘い」

 

   …事業経営はよく「戦(いくさ)」と比喩される!   

    しかし、本来の戦は会社の中にあり、社内の戦に勝てずして外部の戦には勝てな

    い!

 

 

 ある会社の社長が「経営は格闘技ですよ!」と話してくれました。なかなか実感のこもった含蓄のある言葉です。

 

 経営者も幹部も日常の経営活動の中で緊張感のある闘いを通してのみお互いに向上できるものであり、特別な部屋での教育訓練だけでは人は育ちません。頭だけではよい経営はできないという意味です。

 

 よい経営をするため、経営計画の実践を通して経営者は「四つの闘い」に挑む事ができます。

 

 それは

   ①引き上げる闘い

   ②任せる闘い

   ③しゃべらない闘い

   ④つづける闘い

 の四つです。


第三章 経営体質強化に活きる経営計画

 

Ⅰ、「経営の三レベル」とは

 

   …「生業・家業」と「企業」はどこが違うのか?    

    経営計画を経営に活かすことにより、より高い企業へのステップを一歩一歩登

    り詰めることができる!

 

 

 「人・物・金」という聞き慣れた言葉があります。

 

 すぐ思いつくのは経営資源の三要素ですが、少し違った視点で捉えると面白いことに気付きます。

 

 それは、「財(金)をなして下」「仕事(業=物)をつくって中」「人を残して上」という経営者の三レベルを表わすこともできるという事です。

 

 「財(金)をなして下」、社長は従業員の何倍もの能力を持っており、その道における経験も勘も長けています。だから社長一人で十分稼げるのです。

 

 ところがその反面、社長自ら一人で稼いでいる状態をいいます。これが、すなわち「生業・家業」とよばれるもので、経営者レベルの第一段階を示します。

 

 「仕事(業=物)をつくって中」、第二段階の社長は「仕組み」を作ります。稼げる仕組み(戦略戦術)をつくれば、社員がその通り実行することにより業績は上がります。社長自ら稼がなくても業績を上げることができるのです。

 

 これで組織経営の基礎ができあがりました。

 

 「人を残して上」、最上段階は、社長以外の人も「戦略・戦術」を組み立てることができるようになることです。さらに、社長以外の人も「マネージメント」ができるようになることです。そのためには、「人」を育てる必要があります。

 

 そして、人を育てるためには社長自らの「経営哲学」を深める必要がでてきます。

 

 これらが達成できた時に管理者や後継者が育ち、いずれ訪れる自然人である社長の事業承継がスムーズに行われてはじめて継続性のある、すなわち「企業」となるのです。

 

 「企業」の「企」という字が「人が止まる」と書く所以はこの理由です。

 

 経営計画は、この「生業・家業」を「企業」に引き上げる事ができる最大のシステムといえます。

 

 数値計画や行動計画を具体化することは、「戦略・戦術」を練ることになります。(仕組みを作る)。

 

 ボトムアップ方式の経営計画立案や経営会議は、「幹部の育成」に効果があります(人を育てる)。

 

 人の育成を考えたり、経営理念や経営ビジョンを明確化することは、経営者が「経営哲学」を深めることにつながるのです。

 


第二章 全ての経営者が即実践できるMP式経営計画の実践手順

 

Ⅲ、「達成管理」を徹底する

 

   …戦況に流されては戦に勝てない!

    絶えざる目標意識が達成のための行動を喚起する!

 

 

<評価サイクルの運営>

 経営サイクルの中の「DO(実行)-SEE(見直し)」という言葉を評価サイクルと呼びます。

 

 計画立案後の達成管理の仕組みのことです。

 

 従来の経理の仕事というと、「商法税法の要請により現預金の出納と管理を行い、元帳をつけ、試算表を作成し、決算を組み、申告書を作成し第三者への報告をする」といった内容が主であったのですが、先行き不透明な変化の激しい環境下ではそれに加えて「経営者の意思決定のサポート」及びこの「評価サイクルの運営」が経理の重要な仕事となります。経理が「経営管理」といわれる所以はここにあります。

 

 評価サイクルの運営がスムーズに行われることが、達成管理の四つ目のポイントとなります。

 

 

 以上が、MP式経営計画による経営サイクル(PLAN-DO-SEE)の実践手法です。何度も申しましたが、「とにかく経営計画を難しく考えない・難しくしない」ことが、MP式経営計画の最大のポイントです。

 

 なお、MP式経営計画の標準的なタイミングは、12月決算の会社の場合、概ね以下のようになります。

   ①11月…社長が「中期目標」を示す。

   ②12月…単年度経営シミュレーションにて「方法論」を具体化する。

   ③1月…「経営計画発表会」を行う。

   ④毎月初…「いちげつ経営会議」で予実管理と軌道修正を行う。


第二章 全ての経営者が即実践できるMP式経営計画の実践手順

 

Ⅲ、「達成管理」を徹底する

 

   …戦況に流されては戦に勝てない!

    絶えざる目標意識が達成のための行動を喚起する!

 

 

<予実管理の徹底>

 二つ目のポイントは、予実管理の徹底です。

 

 具体的には、予実管理表を作成し、損益目標や分類別の売上目標に対して各々の結果がどうであったかを「ズレ(達成率や差額)」で表示します。全社レベルや部署レベルで、何がどれだけ「ズレ」ているかを明確化することです。しかも、その「ズレ」はタイムリーに入手する必要があります。

 

 そのためには経理の自社処理(自計化)と月次決算制度を確立し、概算でも良いから早く予実管理資料を作成し、意思決定に供する仕組みを確立する必要があります。

 

 売上・仕入を発生主義で捉え、概算棚卸評価・主要引当金等を処理すれば概ね良しとし、予実管理表を作成します。

 

 なお、予実管理というと「数値」のみに目が行きがちですが、数値の裏付けとなった「行動」の予実管理をも併せて評価することを忘れてはなりません。

 

 

<経営会議の実践>

 MP式には、「いちげつ会議」という言葉があります。

 

 第一月曜日に行う経営会議だからです。従って、第三月曜日に行う会議は「さんげつ会議」です。

 

 名称のいわれはともかく、この経営会議が目標達成を左右する大きな要因となります。トップと現場責任者が一堂に会し、「予実管理表」をもとに「ズレ」の原因を見極め、修正のための具体的な「手」を模索する重要な会議です。

 

 しかし、残念なことに「三悪会議」を恒例のように行っている会社もかなりあります。「不準備会議」「演説会議」「言い訳会議」のことです。

 

 ノートと筆記用具しか用意せずに参加する書記係のような人の集まりが「不準備会議」です。

 

 社長ばかりが一生懸命ハッパをかけている会議が「演説会議」です。

 

 達成できなかった理由だけに責任者が終始している後ろ向きの会議が「言い訳会議」です。

 

 この「三悪会議」を脱却し、「事前に各会議メンバーが打つ手を持ち寄り」「社長だけに頼ることなく現場責任者を中心に知恵を絞り」「過去のこと以上に明日以降どうするか」を具現化できたときに初めて「ズレ」が修正される可能性がでてきます。目標達成のための改善行動と協力関係の具体化が重要なのです。

 

 会議を一生懸命やっていても、経営計画も立案されておらず、タイムリーな予実管理資料も揃っていない状況で、さらに三悪会議を行うことに、単なる時間の浪費にしかならないのです。

 


第二章 全ての経営者が即実践できるMP式経営計画の実践手順

 

Ⅲ、「達成管理」を徹底する

 

   …戦況に流されては戦に勝てない!

    絶えざる目標意識が達成のための行動を喚起する!

 

 

 立派な経営計画を作成したのは良かったけれど「一年間社長室に眠ったまま」という話をよく耳にします。

 

 経営計画を立案しただけで目標達成ができるのであれば、こんなに楽なことはありません。勿論、経営計画を立案(目標を明確にし、達成方法を具体化する)するだけでも経営効果は計り知れないものがあるのですが、経営目標の達成とはそんなに生易しいものではないのは周知の通りです。すなわち「達成管理」が不可欠となります。

 

 達成管理のポイントは四つです。

  ①「潜在意識化」する。

  ②「予実管理」を徹底する。

  ③「経営会議」をきちんと行う。

  ④「評価サイクル」を運営する。

 

 

<目標の潜在意識化>

 まず、ポイントの一つ目は目標の潜在意識化です。

 

 「初心忘るるべからず」のことわざ通りになかなか行かないのが現実です。

 

 日常の仕事に忙殺され、日にちが経つにつれ当初の目標は従業員の意識からは徐々に薄らいでいきます。ともすると経営者まで忘れてしまっているという笑えない現象もありえます。

 

 「意識なくして達成なし」、目標を常に潜在意識化するための「環境づくり」が重要となります。

 具体的には、経営目標を壁に掲げたり、全体会議等で経営計画書を定期的に確認する場を持ったり、個人目標を各自の机に飾ったり、…云々です。

 

 単純なことですので、会社にあった方法で要は「根気強く継続する」ことです。

 


第二章 全ての経営者が即実践できるMP式経営計画の実践手順

 

Ⅱ、「方法論」を具現化する

 

   …戦術なくして戦はできるか?

    5W1H(誰が、いつ、何を、どのように…)が目標を現実化する!

 

 

 

<経営計画発表会>

 以上で経営計画書は完成しました。

 

 社長・部署長・社員の全員参加の、文字通り「ボトムアップ方式」の計画書です。

 

 総仕上げは「経営計画発表会」です。

 

 経営計画発表会の目的には、「全社員と共に方向性を確認する」こともありますが、もう一つ重要な視点は「経営者・経営幹部の責任を明確にすること」です。

 

 「人・物・金」を動かす事ができ、意思決定権の全てを握っている経営者・経営幹部は結果に対して百パーセントの責任を負います。

 

 発表会は経営者にとっては勇気のいる行事である反面、目標達成には欠かすことのできない経営者の重要な責務の一つでもあります。

 

 また、経営計画書は社長だけが持っていても目標達成できません、全社員に渡します。目標は全社員で達成するのです。

 

 なお、岩手県のある社長の話を伺った時、経営計画書を印刷し、顧問税理士や取引銀行を招待しホテルで経営計画発表会を行い、毎年約250万円もの予算をかけているとのことでした。

 

 一方、東京のある会社では、経営計画書をコピーして配り、会社の会議室で経営計画発表会を行い、来賓は招待せずに3万円程度の予算で実行しています。

 

 優劣は付けられませんが、MP式では後者の方法をお勧めしています。

 

   ①経営計画書は、分厚い力作よりも「薄ければ薄いほど」社員の身に付く。

   ②立派な印刷でなくてもお金をかけない「コピー+バインダー」で十分である。

   ③会場はホテルでなくても「会議室や事務室」でも立派にできる。

   ④来賓も良いが、経営計画発表会は「社員中心の結束と本音の場」でもある。

 

という理由からです。


第二章 全ての経営者が即実践できるMP式経営計画の実践手順

 

Ⅱ、「方法論」を具現化する

 

   …戦術なくして戦はできるか?

    5W1H(誰が、いつ、何を、どのように…)が目標を現実化する!

 

 

 

<個人目標を確定する>

 

 ボトムアップ方式による計画書づくりの最終段階は「個人目標」の設定です。

 

 また、これも初期の段階から無理に行う必要はありません。

 

 経営計画が定着し部署レベルに落とし込めた段階から実践しても遅くありません。全社及び部署の目標を踏まえ、かつ自分自身の自己実現・将来をも含めて作成します。書式は特に問う必要はありません。社員が素直に書ける簡素な書式をお勧めします。

 

 なお、一つだけ注意をすることがあります。

 

 それは、「個人目標の確定には上司が絡む」ということです。

 

 理由は二つです。

 

   ①会社目標と個人目標とのベクトルを合わせるため

   ②本人の能力アップに繋がる目標を与えるため

 

 特に、②は重要です。

 

 目標面接等により、社員が成長できる目標づくりを上司がエスコートする必要があるのです。


第二章 全ての経営者が即実践できるMP式経営計画の実践手順

 

Ⅱ、「方法論」を具現化する

 

   …戦術なくして戦はできるか?

    5W1H(誰が、いつ、何を、どのように…)が目標を現実化する!

 

 

 

<「月別数値計画」を策定する>

 

 そして「月別数値計画のシミュレーション」へと移ります。

 

 社長と経営幹部が一堂に会しパソコンの専用ソフトと大型ディスプレイやプロジェクターを使用し、各部署から上がった数値計画を入力した後に、トップと現場のすり合わせを行いながら全社数値計画の策定を行うのです。

 

 基本的には中期5カ年計画の立案と仕組みは同じですが、年度単位ではなく月別に各現場の戦術を踏まえた詳細計画を積み上げるシミュレーション方法となります。

 

 目的は、中期目標と社長の要求定義に沿った当期目標の最終決定です。

 

 終了時には、月別の「売上分類別限界利益一覧表」「損益計算書」「貸借対照表」「資金繰り表」「資金運用表」「人件費計画表」「設備投資計画表」「資金計画表」等を作成します。

 

 この手法により、シミュレーションが早く楽にできるだけでなく、計画作成を通して

 

   ①実現性の高い目標の作成

   ②現業責任体制の強化

   ③経営参画意識の向上等を図ることが可能となります。

 

 これが、ボトムアップ方式による「会議型経営シミュレーション」の最大の効果です。

 

 ただし、前述したようにボトムアップ方式は経理内容等の公開が伴うため、無理をせずステップアップで考えるのも現実的な方法です。

 

 絶対に避けるべきなのは「過去の趨勢による予想型計画」や「経営分析値から逆算をして売上高を決めるような経営分析型計画」、コンサルタント等に一方的に作ってもらうような「他人の作文型計画」です。

 

 経営者の魂の入っていない計画では経営できないのです。


第二章 全ての経営者が即実践できるMP式経営計画の実践手順

 

Ⅱ、「方法論」を具現化する

 

   …戦術なくして戦はできるか?

    5W1H(誰が、いつ、何を、どのように…)が目標を現実化する!

 

 

 

 第二ステップは、目標達成の為の方法論を具体化することです。

 

 前述したように、経営目標を「絵に描いた餅」にしないためです。

 

 経営目標の明確化が経営者の専らの仕事であるのに対し、経営者だけではなく経営幹部や全社員の参画による「ボトムアップ方式」が方法論の具体化の理想的な形態です。

 

 方法論の具体化は、中期よりも単年度(一年)計画をイメージした方が現実的です。

 

 具体的には次のような四つの手順で行います。

   ①「部署目標・行動計画」を立案する

   ②「月別数値計画」を策定する

   ③「個人目標」を確定する

   ④「経営計画発表会」を行う

 

<「部署目標・行動計画」を立案する>

 

 社長による経営目標の明確化が行われたら、経営会議を開催し、経営幹部に対し「中期目標」「当期目標」と「部署別要求定義」の説明を行います。それを受けて各幹部は、戦術を練りながら、部署目標を組立てます。

 

 「数値目標・行動目標」及び、達成するための「アクションプラン」が明確に記載されている事がポイントとなります。

 

 ボトムアップ方式がより浸透してきた段階で、経営幹部だけではなく各部署のスタッフとともに実践できれば、その計画はスタッフ自らのものにする事ができるようになります。

 


第二章 全ての経営者が即実践できるMP式経営計画の実践手順

 

Ⅰ、社長が「目標」を示す

 

 …大義名分なくして戦はできない!

  社長の信念・方向性なくして事業は継続できない!

 

 

 

<中期目標(ビジョン)を示す>

 

 A君は市場なしと見たため何もアクションをとりません。

 

 B君はパンフレットを用意し、島に乗り込みます。

 

 「靴を履くと文化的ですよ!安全ですよ!機能的ですよ!」と一生懸命売り込みます。

 

 一年後、全島民が靴を履きました。A君は残念がり、「靴は三年もつが三年目では遅い、二年後に再勝負だ」といって帰りました。

 

 B君は帰りません。

 

 「家の中ではスリッパを履きませんか!スポーツには皮ではなくゴムの靴はいかがですか!山には登山靴がいいですか!」と次から次へとニーズをつくりだし、売上をどんどん伸ばします。

 

 このように、市場の見方一つで販売戦略は大きく変わるのです。

 

 経営計画の立案を通して「市場をどのように見るか」に最大のエネルギーを投入する意味はここにあります。

 

 また体力分析では、挨拶やお客様への対応などの企業風土ともいえる「基礎力」、会議運営や権限委譲・報告連絡相談などの経営機能面の「組織力」、新しい技術や情報に対する意識など成長に欠かすことが出来ない「発展力」等の分析を行います。

 

 基礎力を改善するには社員教育など若干時間をかける必要があります。

 

 組織力を強化しないと企業規模の拡大に十分な対応ができません。

 

 発展力は経営者の姿勢一つで比較的迅速に改善できるテーマでもあります。

 

 企業体力面の強みと課題を整理したうえで、「欠点是正法」や「長所伸長法」など、どのような経営体質強化策をとるのかは経営者が判断します。

 

 以上、自社分析はその名の通り経営者や経営幹部が自らの直観により行うことが重要となります。

 

 それは、「経営は主観」であるという基本的考え方からです。 

 

 経営に王道はなく、答えも一つではありません。経営者のものの見方・考え方により、その会社の命運は決まります。

 


第二章 全ての経営者が即実践できるMP式経営計画の実践手順

 

Ⅰ、社長が「目標」を示す

 

 …大義名分なくして戦はできない!

  社長の信念・方向性なくして事業は継続できない!

 

 

 

<中期目標(ビジョン)を示す>

 

 「危機管理」という言葉があります。

 

 経営の危機管理には多くの意味が含まれていますが、経営の生命線ともいうべき売上の危機管理を最大視すべきです。

 

 すなわち、「四本の柱」や「五本の柱」と呼ばれる売上のリスク分散を計ることです。

 

 変化の激しい先行き不透明な時代、消費者ニーズは刻々と変わる一方、過去に頼れた親会社や元請会社とて安心できない環境に変わってしまったのです。

 

 一つの売上分野に依存度が高いということは、リスクが非常に高いということを意味します。

 

 得意先の一極集中・商品の一点集中・販売ルートの偏り等を改善し、たとえ一つの売上分野に支障が出ても生き残れる売上体質を構築するのも経営者の重要意思決定事項です。しかし、「柱」は一朝一夕にはできません。自社の強みをじっくりと見つめ戦略性と継続性を持って構築する必要があります。

 

 「健全な赤字部門を持つ」という言葉はこのことを意味しています。

 

 販売力分析の中の「市場性分析」についても重要なポイントがあります。

 

 市場性(市場の有無)は見る人により変わるということです。

 

 以前、自動車整備業の社長ばかりで中期経営計画の立案教室を行ったときに、同じ業種でありながら、「市場は有望」という経営者と、「市場が厳しい」という経営者に分かれてしまいました。

 

 目に見えている「顕在ニーズ」をみるか、掘り起こせば顕在化する「潜在ニーズ」を見るかによって市場は異なり、販売戦略も変わってきます。

 

 この市場と販売戦略のたとえ話に「靴のセールスマン」の話があります。

 

 二人の靴のセールスマンが南の島に靴が売れるかどうか調査に行きました。飛行機から降り立ったところ、島の住民は全員裸足でした。

 

 二人の帰国後、社長が「市場はあるか?」と質問しました。

 

 A君は、「全くありません。誰も靴を履いていません」と答えました。

 

 B君は、「素晴らしい市場です。誰も靴を履いていません」と答えました。

 


第二章 全ての経営者が即実践できるMP式経営計画の実践手順

 

Ⅰ、社長が「目標」を示す

 

 …大義名分なくして戦はできない!

  社長の信念・方向性なくして事業は継続できない!

 

<中期目標(ビジョン)を示す>

 

 販売力分析の一つの項目に「商品のライフサイクル分析」がありますが、これは「挑戦」「成長」「安定」「成熟」「衰退」のどの位置に取扱商品が該当するかを自己分析します。

 

 歴史が古い業種や企業では成熟・衰退商品の傾向、ベンチャー企業では挑戦商品の傾向が多かったり企業によりまちまちですが、問題はその分析結果から経営者が何をどう判断し手を打っていくかにあります。

 

 ライフサイクルは必ず左から右に流れ、何もせずに放っておけば人の一生同様必ず衰退し、死んでいきます。新生又は再生(付加価値化)の努力をしていかない限り存続と発展は望めないのです。

 

 某上場楽器会社が、成熟期から衰退期に落ちようとしていたピアノにヘッドホーンをつけて成長商品への再生に成功し、翌年にはバイオリン、続いてドラムへと付加価値化の工夫をしながら商品のライフサイクルの維持向上をした話があります。

 

 ライフサイクル分析とそれに基づく商品戦略の意思決定は、中期目標設定に欠かせない経営者の重要な仕事の一つです。

 

 また、事業領域の意思決定に欠かせないのが市場と商品の組み合わせによる販売戦略です。

 

 販売戦略を考えるときは、大きく四つのエリアで検討するとわかりやすくなります。

   ①既存商品を既存市場に販売する

      …営業力強化や商品の差別化・価格政策等により競合力を高める(市場浸透)

   ②既存商品を新規市場に販売する

      …「冷蔵庫をアラスカに売る」「美容院が男性客をも取り込む」等、今持っ

       ている技術(商品)を新市場に提供する(市場開拓)

   ③新規商品を既存市場に販売する

      …「宅配業者が水やトイレットペーパー等を配達」等、今の市場(顧客)に

       新商品を提供する(商品開発)

   ④新規商品を新規市場に提供する

      …従来の業態に縁のある「関連多角化」と全く縁のない「無関連多角化」の

       二つがあり、後者が最もリスクがある(多角化)

 

 今後どのエリアにおいて勝負していくのかをじっくり考えて事業領域を意思決定する必要があります。

 


第二章 全ての経営者が即実践できるMP式経営計画の実践手順

 

Ⅰ、社長が「目標」を示す

 

 …大義名分なくして戦はできない!

  社長の信念・方向性なくして事業は継続できない!

 

 

 

<中期目標(ビジョン)を示す>

 

 「何屋になるのか?」「既存商品か新規商品か?」「既存市場か新規市場か?」「一本の柱(事業)で勝負するのか五本の柱で勝負するのか?」等、事業領域を決定するのは経営者の大変重要な仕事となります。

 

 一方、事業規模は具体的な数値(一人当たりの付加価値XXX万円、支店数XX店舗、社員数XX名)によって表現することにより、より明確化されます。また、ゴルフと同じでロングホール(中期目標)はワンオン出来ません。

 

 何回か実践し経営計画づくりが浸透してきたら、中期目標を達成するためのプロセスを年度別やジャンル別(「売上・生産性」「商品・市場」「組織・規模」「その他・設備・制度」等)にイメージ化すると一層わかりやすくなります。

 

 以上の中期目標の明示により、従業員は「こういう会社になるんだ」と将来の企業イメージを抱くことができるようになります。

 

 将来展望が見えると従業員の中から「自分はこういう分野の仕事に貢献をしたい」「この仕事を自分に任せて欲しい」といった意欲を示す人が必ず出てくるようになります。

 

 この中期目標を設定する際に、より戦略性をもたせるための一歩踏み込んで「自社分析」をお勧めします。

 

 自社分析を行う目標は、自社に合った戦略を具現化するために自社の「強み」や「弱み(課題)を整理することにあります。

 

 「小が大を食う」戦略のたとえは、己(自社)を知ってこそ可能になるのです。具体的には、利益の源泉である「販売力分析」と企業の基本的な「体力分析」を評価します。

 

 販売力分析は、商品分類毎に「市場性」「商品の質」「価格の妥当性」「競合力」「営業力」「シェア」「粗利」「商品ライフサイクルの位置」「今後の見通し」などの評価分析を行います。

 

 総合的な結果から、経営者がどの販売分析項目に強みと課題を感じているか、またどの商品分類に自信があるか等を整理します。経営者だけでなく経営幹部も自社分析に参画することによりギャップ分析を行うことも意義があります。

 


第二章 全ての経営者が即実践できるMP式経営計画の実践手順

 

Ⅰ、社長が「目標」を示す

 

 …大義名分なくして戦はできない!

  社長の信念・方向性なくして事業は継続できない!

 

 MP式経営計画立案の第一ステップは、経営目標を明確化することから始まります。

 

 この経営目標の明確化は経営者しかできない仕事であり、具体的には四つの手順で実践します。

   ①経営理念・経営目標を明確化する

   ②中期目標を示す(自社分析を含む)

   ③5ヵ年数値計画を策定する

   ④当期目標を確定する

 

<経営理念・経営目標を明確化する>

 

 経営者の最も重要な仕事の一つといわれているのが「経営理念・経営目標」の明確化です。

 

 「為政者に信念がなければ国がつぶれ、経営者に信念がなければ事業がつぶれる」の言葉通り、魂のない経営は永くは続きません。

 

 一方、よく経営計画の本を読むと「経営理念とは…」「社是とは…」「経営方針とは…」

 

「経営目標とは…」「戦略とは…」「戦術とは…」と懇切丁寧に定義し教えてくれるケースがありますが、MP式ではあまりこだわりません。

 

 ただ一つ、「経営者が自分の会社を通して全ての従業員と一緒に一体何を実現したいのか」を素直にわかりやすく表現してもらうことで十分です。

 

 また、中には気持ちが入りすぎて何ページもの盛りだくさんな理念・目標を作成する経営者もいますが、全従業員に浸透できるようにするため、出来るだけ短く(箇条書き等)シンプルに作成します。

 

 経営者の思い入れは理解できますが、従業員の頭に入る量は限られているからです。

    「本物のコンクリートをつくる(某中小企業)」

    「清潔な国民は?栄する(某上場企業)」

    「サインを通じて都市の景観づくりに貢献する(某中小企業)」

などは名理念・名目標ではないでしょうか。

 

 また、中には高名な人の言葉を引用して理念・目標を掲げる経営者も時々みうけられますが、会社のバイブルですので、できれば経営者自らの言葉で作ることをお勧めします。

 


第二章 全ての経営者が即実践できるMP式経営計画の実践手順

 

 

 事業を経営するということは、経営者がある目標を掲げそれを実現するために社員や取引先等の協力を得るということです。

 

 しかも、その目標は社会的に有益で受け入れられるものでなければなりません。そして実現の過程及び結果で得られた成果は公平に分配する事も経営者の重要な役割となります。

 

 また、経営は「ルールに基づいた戦争」ともいわれます。事業経営には必ず同業他社(ライバル)が存在するからです。

 

 「誰がかつのでしょうか?」

 

 経営者が時代の変化に沿った正しい目標を示し、社員等の協力を多く得られる企業が勝つことができるのです。

 

 以上のように経営計画書は、多くの社員に協力してもらうための設計図に他ならないのです。

 

             目標(社会的に有益であること)

                    ↓

              社員の協力(取引先も含む)

                    ↓

                   実現

                    ↓

        成果配分(他に感謝され自分の存在価値が認識できる)

 

 MP式では、三つの手順で設計図を書きます。

 

             <MP式経営計画の実践手順>

             1.社長が「目標を示す」

                 ①経営理念・経営目標

                 ②中期目標

                 ③5ヵ年数値計画

                 ④全社当期目標

 

             2.「方法論」を具体化する…トップダウン方式

                          …ボトムアップ方式

                 ①月別数値計画

                 ②月別行動計画(部署・個人)

                 ③経営計画発表会

 

             3.「達成管理を徹底する」

                 ①自計化

                 ②いちげつ経営会議

                 ③評価サイクルの確立

 


第一章 なぜ、今経営計画なのか?

 

 

④ロケット理論に学ぶ

 

 …企業が目標達成をするにはどのような仕組みが必要なのか?

  MP式経営計画では、ロケットが月に行けたのは三つの要件から成り立っている

  というごく簡単な「ロケット理論」を経営の世界に活用!

 

 

<ロケット理論=到達要件その2>

 

 「絵に描いた餅」という言葉があります。

 

 たとえ明確にしたとはいえ、非現実的な目標では到底達成できません。

 

 ロケットが月に行けた二つ目の要件は、「月に行くための方法論の具体化が出来たから」だといわれています。

 

 どのようなロケットをいつまでに誰がつくるのかを具体化し、自転公転や気候状況などの外部要因を踏まえてシュミレーションを行った上で、ロケットを打ち上げることにより、はじめて成功率が高くなるのです。

 

 すなわち、目標達成方法の具体化が必要となるのです。

 

 では、どのような具体化をすべきなのでしょうか?

 

 一つめのポイントは、「その計画を実行する人」が具体化をすることです。

 

 目標達成の具体化方法に「トップダウン方式」と「ボトムアップ方式」の二つの方法がありますが、でき得れば現場参加型のボトムアップ方式が効果的です。

 

 なお、トップダウン・ボトムアップには二つの考え方があります。

 

 「到達目標を先に決め、どう達成するかを具体化する(トップダウン)、現状からどう積み上げていく事ができるかを具体化する(ボトムアップ)」という考え方と「トップが具体化し現場にブレークダウンしていく(トップダウン)、現場の意見を積み上げて具体化していく(ボトムアップ)」の二つの考え方です。

 

 ここでいうボトムアップ方式とは、後者のトップダウン・ボトムアップを意味します。時間と労力がかかりますが、経営者と現場の意見をすり合わせながら積み上げていくことにより、「実現可能性の高い計画」ができるとともに経営計画づくりに参画した「現場責任者の経営意識が向上する」という効果も得ることができます。

 

 ただし、経理公開が前提となり、経営者にとっては少し勇気のいる立案方法でもあります。

 

 売上や原価の計画まではスムーズに行くのですが、経費面に移ると人件費や交際費、支払利息などが見えたり、赤字や債務超過が見えたり、従業員には知られたくない部分に触れざるを得なくなるからです。場合によっては従業員の志気に悪影響を及ぼすこともあり得るからです。

 

 無理をせずに、最初はトップダウン方式からスタートし、土壌が育ってからボトムアップ方式に移行するのも一つの方法です。 

 

 方法論具体化の二つめのポイントは、「アクションプラン(行動計画書)」に落とし込むことです。誰が、いつ、どのような役割を果たす事により目標が達成できるのかを、かみ砕き成功へのシナリオを作ることです。

 

 数値計画とその裏付けとなる行動計画は表裏一体の関係にあり、方法論の具体化にどちらも欠かすことが出来ません。

 

 

 「志立ちて半ば成就」のたとえ通り、この達成要件の「1」と「2」が満たされた段階で目標は50%達成できたようなものです。

 

 経営の最高責任者が方向性を示し、数値化・特定化等により明確化され、全社員に計画書が配られ、経営計画発表会にて全社員で確認をしました。

 

 また、その計画は現場の意見を採り入れて作成されており、誰が、いつ、どのように役割を果たしていくのかも具体化されました。あとは、残りの50%です。

 


第一章 なぜ、今経営計画なのか?

 

 

④ロケット理論に学ぶ

 

 …企業が目標達成をするにはどのような仕組みが必要なのか?

  MP式経営計画では、ロケットが月に行けたのは三つの要件から成り立っている

  というごく簡単な「ロケット理論」を経営の世界に活用!

 

 

<ロケット理論=到達要件その1>

 

 ロケットが月に行けた第一番目の要件は、「月に行こうと思ったからだ」といわれています。

 

 偶然交通事故に遭うことはあっても、偶然「月」に行くことはあり得ません。

 

 会社の経営目標とは、交通事故の類ではなく、「月に行く」と同様に達成しようという「志」を持ってこそようやく成就できる次元のものなのです。

 

 「念ずれば花開く」の言葉通り、何を達成したいのか、目標を明確にしてこそ達成できるのです。

 

 ただ、ここで問題になるのは「明確」という言葉の意味です。

 

 本当に明確になっているかどうかです。

 

 たとえば「速く走れ、高く飛べ。売上を上げろ、値引きを抑えろ…」という類の目標になっていないかということです。

 

 はたして従業員は一生懸命走るのですが、百メートルを何秒で走ったらいいのでしょうか?これでは目標があるようでないのです。

 

 「百メートルを十二秒で走れ…、二メートルの高さを飛べ…。売上三億円…。目標利益一千万円…。月へ行け…、火星へ行け…。」というようにできるだけ具体的な「数値化」「特定化」を行い、解釈する人によって異なることのないような明確な目標設定をする必要があるのです。

 

 

 明確な目標にするためにもう一つ重要なことは、全社員が明確になっているかということです。

 

 経営計画書を社長しか持っていないとか、役員しか持っていないという会社が多々ありますが、会社の目標は全ての従業員の協力がなければ達成できるものではありません。

 

 「経営計画書を全社員に配布し、経営計画発表会を開催する」ことにより、はじめて全社のベクトル(方向性)が一致するのです。

 

 以上、目標達成の第一要件である「明確な目標」を設定するためには、「数値計画化」と「経営計画発表会」の二つが実践上のポイントとなります。

 


第一章 なぜ、今経営計画なのか?

 

 

③よい経営を行う

 

 

 

<信念を示す>

 

 「社員を動かすのは社長の姿勢」という言葉があります。

 

 従業員は何を糧に仕事をしているのでしょうか。たとえば「明日までに徹夜をしてある仕事を完成しなければならない」時に、果たして残業代だけで人が動くかどうかということです。給与や休暇などの待遇面もさることながら、仕事をする価値観が明確でない限り、身を入れて永く仕事をすることが出来ないのは周知の通りです。

 

 また、従業員が経営者の人柄についてくるのは小規模の会社までです。相当の規模になりますと、経営者とは話が出来ない従業員が大半になります。人柄以上に経営者の価値観(理念・ビジョン)に共感・共鳴を抱かない限り帰属意識は高まりません。

 

 経営の神様といわれた松下幸之助氏が「昭和七年に初めて経営理念を作った。経営に魂が入り、価値の共有化が出来、事業は驚くほど伸びた」と話されています。

 

 「社長がこの会社を通して全ての社員と一緒に何を実現しようとしているのか」「この会社の存在価値はどこにあるのか」を明確化する必要があるのです。

 

 

 経営計画立案の過程において、以上の「よい経営の三要素」を全て手に入れることが出来るのです。

 

 経営計画書の一ページ目には必ず「経営理念・経営目標(信念)」が明確化されています。そして、立案の過程で自社の「強みと課題」を整理(知る)する事ができ、自社に合った戦略戦術に基づく「数値計画&行動計画(前向きの数値)」が作成されるのです。

 

 経営学の大家といわれた一倉定氏の言葉「社長の仕事とは、環境を整えること・お客様を訪問すること・経営計画を立てること」にありますように、経営計画は経営者自らが行わなければならない仕事の一つであることを再確認する必要があります。

 


第一章 なぜ、今経営計画なのか?

 

 

③よい経営を行う

 

 

 

<前向きの数値を持つ>

 

 「前向きの数値なくして事業は考えられない」という言葉があります。

 

 過去の試算表や決算書をいくらいじくり回しても会社の業績は変わりません。過去会計といわれる所以です。ところが経営者の頭の中は過去よりも常に明日以降のことを考えています。「今後の売上見通しはどうか?」「賞与資金は大丈夫か?」「設備投資の回収見通しや返済資金繰りは大丈夫か?」「来年の採用をして大丈夫か?」など、常に過去よりも未来に目が向いています。

 

 経営計画を立案するということは明日以降の未来数値を戦略・戦術と共に組み立てることに他なりません。「どの商品を扱うか? どの市場に進出するか? どの販売戦術をとるか?」「売上が予定通り行った場合・10%下回った場合・5%上回った場合」「人を採用した場合・設備投資をした場合・外注化した場合」など幾通りかの見通し(「ABC予算」という)を立て、考えられるあらゆる可能性の中から最善の道を選択し、経営に当たらなければなりません。すなわち、過去会計ではなく未来会計をもって経営に当たる必要があるのです。

 

 さらに、重要なことがあります。

 

 それは、必ず「明るい数値」を持つ必要があることです。

 

 売上不振・赤字続き・資金繰り難・債務超過等、どんなに現状が厳しい会社であっても、将来(3~5年先)の数値は明るいものでなければならないのです。その理由は簡単です。将来が明るくならない会社では、従業員が魅力を感じ、展望をもって仕事をする気にならないからです。

 

 そのために経営者は、あらゆる知恵(戦略・戦術)を駆使し明るい可能性を模索していかなければなりません。このことは経営者の永遠の宿命でもあります。

 


第一章 なぜ、今経営計画なのか?

 

 

③よい経営を行う

 

 …経営者が「よい経営」をするための要素とは?

  経営計画案により「自社を知る」「前向きの数値を持つ」「信念を示す」ことが

  できる!

 

<自社を知る>

 

 まず「自らの会社を知らずして経営はできない」といわれます。孫子の兵法(敵を知り、己を知らば、百戦危うからず)にもあるように、経営者が最善の経営を行うには、まず自社の実態(強みと弱み)を把握することが不可欠となります。

 

 会社を知る一つの方法に専門家による経営分析等がありますが、経営分析により自社を知るにはかなりの限界があります。それは、結果としての数値面である上に、中小企業の経営分析値は企業の実体を正しく表していない場合がかなり多いからです。たとえば、監査の精度もさることながら在庫の評価一つで財務諸表が変わってしまったり、役員報酬・役員借入金利息・減価償却…など恣意や調整が入る要素が多々あったり、同族企業が多いため配当等株主に対する責任上の諸政策が取られていなかったりです。勿論、一つの指標として参考にすることには意味がありますが、会社の実態をよく知るという観点からは十分とは言えません。

 

 それより経営者自らが経営計画を立案することです。会社の実態がよく見えてきます。例えば売上計画を立案する過程の中で、「市場性はどうか?」「商品の質はどうか?」「営業力はあるか?」「商品のライフサイクルの位置」…など、販売面での「強み」と「弱み(課題)」をよく考察することができます。さらにその中の営業力を強化するために「増員が必要なのか?」「教育が必要なのか?」「責任者の交代が必要なのか?」「代理店政策の見直しが必要か?」等、自社に合った対応策を検討することができるのです。

 

 経営計画は、経営者が自分の会社を知る最も有効な経営手法の一つといえるのです。


第一章 なぜ、今経営計画なのか?

 

 

②激動の時代を乗り切る経営者の条件とは?

 

 

 

<責任がとれる>

 

 最後に経営者は「責任がとれる人」でなければなりません。

 

 残念な話ですが、数年前にある会社が倒産いたしました。役員報酬も取らず従業員の昇給を行い、家屋敷を担保に入れ、大学生の息子まで連帯保証させての挙げ句です。当然、全ての財産を失い、マイナスからの再出発を余儀なくされました。

 

 経営者と従業員との決定的な違いはここにあります。従業員の様に簡単に辞めるわけにはいかないのです。そして最悪の場合は最後の責任を負わなければならないのです。

 

 しかも、十人の従業員を抱える経営者の双肩には四人家族とすると約四十人の生活がかかっており責任は重大で、最後の責任に至ることは何としても避けなければなりません。日常の責任を全うしながら給料を払い続け、債務保証をし、会社を維持向上させる…、経営者の債務は大変なものです。いずれにしても最高責任者としての日常及び最後の責任をとれる人が経営者であるわけです。

 

 ただし、有能な経営者とは日常の責任の範囲内にとどめることができる経営者であるのはいうまでもありません。

 

 経営計画立案により、経営者の思いを込めた「方向性を示す」ことができます。

 

 経営計画に基づく達成管理の徹底により「環境に適応する」ための検討見直しができます。

 

 以上の2つの実践により、最後の責任をとる事態を招かないよう「日常の責任をとる」ことが可能になるのです。

 


第一章 なぜ、今経営計画なのか?

 

 

②激動の時代を乗り切る経営者の条件とは?

 

 

 

<環境に適応できる>

 

 第二は「環境に適応できる人」でなければなりません。

 

 「これが不足しているからできません。これとこれが整えばできます」という従業員はどこの会社にも数多くいます。それをいうことができないのが経営者なのです。どんなに立地条件が悪かろうと、人材が不足しようと、経営環境が悪化しようと、限られた条件のもとで企業目的を達成できる人が経営者と呼ばれるのです。責任を他に転嫁できないのが経営者の宿命でもあります。だから経営者は「環境適応業」とまでいわれるのです。

 

 「できない理由」を探すのは簡単でも、「できない理由」をつくるのは並大抵のことではありません。

 

 経営者は、いかなる環境下でも「できる理由」を創造し続けなければならないのです。

 

 また、テンポの速い時代の中で「来月の会議を待ってから…」では手遅れや命取りになる場合が頻繁にあります。そのためには、必要悪といわれる中小企業の特権とも言うべき「朝令暮改」が不可欠となるケースが多々あります。

 

 「君子、日に三転す」の先哲の言葉通り、後手にならぬよう先を読んで早めに手を打つ中小企業ならではの対処方法が有効となるのです。

 

 多くの経営者が、ゴルフをしながら…、酒を飲みながら…、寝ているときでさえ…、経営のことを考えていると話します。このことは、二十四時間・三百六十五日、経営者が「良い朝令暮改」をするため「できる理由」を模索している本能の表れといえます。


第一章 なぜ、今経営計画なのか?

 

 

②激動の時代を乗り切る経営者の条件とは?

 

 …激動の時代を乗り切るため「経営者」にどのような条件が要求されるのか?

  「方向性を示せる」「環境に適応できる」「責任をとれる」の3つのことができる経営者でなければ厳しい経営環境の中で会社を存続し発展させることはまず不可能!

 

<方向性を示す>

 

 まず第一に「方向性を示せる人」でなければなりません。

 

 具体的には、「五年後の会社の姿を語れるか?」ということです。

 

 よく若い従業員を前にして「将来の夢を持って仕事をしよう!」「仕事を通して自己実現をしよう!」と声を掛け、激励する経営者はたくさんいます。

 

 その一方で、会社の展望を明確にせずに経営(?)している経営者もたくさんいるのです。経営者自身が、「何のために事業をし、どのような会社にしていこうとしているのか」を曖昧にしたまま、果たして従業員にどのような夢を持てということが出来るのでしょうか。

 

 まず、経営者自身が会社のビジョンを示さない限り、会社の展望も見えないし従業員も夢の持ちようがないのです。

 

 もし現状維持でいいと考えている経営者は後退を意味します。なぜならばお客様も経営環境も仕事をする人も常に変化し成長していくからです。

 

 後退する企業はやがて存在理由を失い、社会から必要とされない企業に転落していきます。また、方向性を示すには、会社の現状と取り巻く環境を踏まえて最善の策を考え出すという「戦略的思考」を常に持ち続ける必要があります。

 

 時々、「忙しくて将来のことなど考えている余裕がない」という経営者がいます。

 

 経営者の中に「仕事に追われている人」と「仕事を追っている人」がいます。仕事に追われている人は、「手」も「目」も目の前の仕事に止まっています。「先」が見えるはずがありません。仕事を追う人の「手」は眼前ですが、「目」は常に明日以降・数ケ月先・数年先に向けられています。

 

 「着眼大局・着手小局」の言葉通り、仕事に追われている経営者と、追っている経営者では仕事の仕方・生き方が全く違うのです。

 


第一章 なぜ、今経営計画なのか?

 

 

①21世紀の企業経営 …時代の変化をとらえ対応できる経営者と企業のみが生き残る時代が来た!

 

<変化への対応>

 

 今、経営者にとって大切なのは、過去の幻影を捨て去り、ありのままの現実を直視し、決断(変化)することです。 

 

「変化」は避けることのできない時代の要領であり、21世紀を生き延びるためのキーワードだといえます。変化が時代のキーワードであるならば、私たちは変化が描くシナリオを、つまり変化が私たちに用意してくれる舞台とはどんなものなのかを十分に認識しておく必要があります。 

 

 歴史的に見ると、変化は必ずといってよいほど競争激化を引き起こしています。それは、旧い秩序を守ろうとする勢力と新しい秩序を創ろうとする勢力との凌ぎあいでもあります。そして、あらゆる状況が二極分化していくのです。つまり、変化は成長と衰退という両極の二つのシナリオを私たちに準備しているのです。変化に適応できるか否かよって何れかの道を歩まざるを得ないのです。

 

 いつの時代においても、変化に適応できたものが進化し、変化に適応できなかったものが淘汰されていきます。

 

 変化に適応するためには大胆な発想の転換が必要となります。

 

 そのためには、時代を先取りする「手法」を変えなければならないのです。今まで多くの企業では、過去のデータを分析し、ここ数年の傾向を据え未来を予測するという方法をとってきましたが、この分析・予測型の手法では、変化の激しい時代には全く通用しない事を知る必要があります。

 

 今からの経営者にとって大切なのは、分析・予測する能力ではなく、時代の変化を洞察する力です。小さな変化の根底にある時代の潮流をつかみ取り、自らの進路の方向性を見定め、決断する力が必要なのです。

 

 つまり、未来は予測されるものではなく、変化を味方につけて自らが創造していくものでなくてはならないのです。その意味において、未来創造型の経営こそ成功する経営者の目指すべき方向性といえます。

 

 「経営計画」を立案するということは、この時代の「変化」を感じ取り、自らが「変化(決断)」するための具体的経営行動に他ならないのです。

 


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第一章 なぜ、今経営計画なのか?

 

 

①21世紀の企業経営 …時代の変化をとらえ対応できる経営者と企業のみが生き残る時代が来た!

 

<経営環境の変化>

 

 21世紀を迎えて時代の潮流は大きく変化しています。

 

 バブル崩壊、経済のグローバル化、規制緩和、金融ビッグバン、銀行&大会社&土地神話の崩壊、財閥解体をはじめとする企業グループの崩壊、成長神話(右肩上がり)の崩壊、日本式経営の行き詰まり、少子高齢化、環境破壊、もの余り時代、インターネットをはじめとする情報通信環境の激変等、思いついたまま上げても一つ一つが大変重い課題ばかり

です。

 

こうした企業環境の激変は、経営者にパラダイムの転換を求めています。

パラダイムとは思考の枠組みのことですが、私たちが今まで信じてきた物の見方や考え方が全く通用しない時代に突入してしまったのです。もう、今まで積み上げてきたハウツウやノウハウといった過去の成功体験だけにしがみついていたのではとうてい存続・発展は望めないのです。

 

 むしろ過去の成功体験が未来の失敗の要素となる可能性が高いといっても決して過言ではありません。 

 

 過去と未来が非連続となる時代、今までの常識が非常識となる時代なのです。